ボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)と言えば、世界有数のコンサルファーム。
世界的に影響を与える大企業だけでなく、パブリックセクターでも、BCGの頭脳やノウハウは必要とされている。
では、どんな人が、どんな想いで、どんな環境で働いているのだろうか。
今回は、BCGでパブリックセクターを中心に様々な案件を担当する折茂 美保さんと、総務省からコンサルタントへ転身された岡部 晋太郎さんに、「BCGって実際どんな会社ですか?」と率直な疑問をぶつけてみました。
目次
「頭は冷静だけど、心は熱い魅力的な人たち」
Publink 深山(以下、深山):今回は「BCGで官民の垣根を越えている人に取材したい」とお願いしたら、おふたりを紹介頂いたのですが、プロフィールを拝見するとバックグラウンドは全然違いますね。
BCG 折茂 様(以下、折茂):そうですね。私は新卒からの入社ですが、岡部さんは総務省からの転職になります。
BCG 岡部 様(以下、岡部):はい、私の場合は、総務省で携帯電話の電波の割り当てだったり、主に情報通信政策の立案や、財務省に出向して「政策金融」に携わったりしていました。
深山:私は、コンサルで、しかもBCGと聞くと「超優秀な人たちが集まる超厳しい環境」という印象を勝手に抱いているのですが、なぜ飛び込んでみようと思われたのですか。
折茂:コンサルティングの仕事は、お客様との守秘義務のため具体的な情報を公開できない事情もあり、なかなかイメージがわきにくいかもしれませんね。私も最初は「優秀だけど、冷たい人が多いのかも」といったイメージを持っていましたが、新卒学生向けのインターンシップでコンサルティングの仕事を疑似体験して、社会に与えるインパクトの大きさに魅了されました。
それに、インターンシップをとおして出会ったコンサルタントは、「世の中をより良くするために出来ることはなにか?」という考えを持つ、『頭は冷静だけど心は熱い』人たちでした。チームメンバーのみならず、困っていそうな人がいたら自然と助けようと手を伸ばす、「良い意味でのお節介」な環境だとも感じました。世の中にインパクトを出すには、自分一人の力には限界があります。ここであれば、チーム一丸となってインパクトを出していけるのではないか、と感じたことから、オファーを頂いた時は「是非チャレンジしたい!」と思いました。
深山:「良い意味でのお節介」って素敵ですね。岡部さんはいかがですか。
岡部:仕事へのフィードバックを得ながら社会に大きなインパクトを与えられる仕事をしたい、という想いが転職した際の強い動機でした。
省庁の仕事は、広く大きい一方で、自分のしていることがどんな影響を与えているか、本当に世の中のためになっているかを確認するためのダイレクトなフィードバックが得づらい。言い換えると「お客さんの顔が見えない」んです。自分のしたことが本当にためになっているのか。
深山:なるほど。選択肢は多くあったと思うのですが、そんな中でコンサルという仕事を選ばれたのはどうしてですか。
岡部:例えば、ひとつの事業会社に入ると、経営陣と一緒に大きな仕事に取り組むような機会を入社してすぐに得ることは難しく、組織の中で社会に大きなインパクトを出せるようになるのに時間がかかるのでは、と思ったのです。
ですが、コンサルファームであれば、早々に経営アジェンダに関われます。その中でもBCGは社会的影響力の大きなクライアントが多いため、より大きな社会的インパクトを与えられる仕事を出来ると感じたことが、コンサルの道を選択した理由です。
深山:おふたりのいまの仕事内容について、お伺いできますか。
折茂:入社して長く民間企業のTMT(テクノロジー・メディア・テレコム領域)を中心に従事してきましたが、ここ2年くらいは主にパブリックセクターのプロジェクトに従事しています。パブリックセクターというと広いですが、私の場合は、主に教育事業に関わっています。
その教育でも大きく3つの領域で、一つは”K12(幼稚園から高等学校を卒業するまでの期間)”の教育改革として経産省が進めている「未来の教室」。二つ目は産業人材のリカレント教育。そして、AI人材戦略として「AI Quest」に関わっています。
それに加え、SIPA(Social Impact Practice Area)の日本リーダーとして、企業が企業活動を通して、経済的価値だけでない社会的なリターンを意識していくことを目指すという観点から、国や関連する企業の方々と、環境負荷低減やESG投資やSDGsを日本に根付かせていくための政策立案を考える取組みもしています。
深山:コンサルというと主に民間企業を対象とするイメージですが、行政機関も対象としているのですね。
折茂:国をひとつの大企業と捉えると分かりやすいと思います。そこには課題があり、取組むべきことへの戦略が必要になってきますよね。
深山:そう考えると非常に分かりやすいですね。岡部さんは省庁を経由しているので、やはりパブリックセクターのお仕事をされているのですか。
岡部:確かにパブリックセクターのプロジェクトにも従事してきましたが、最近は、製造業クライアント様向けのプロジェクトに関わることが増えました。主に、中・長期の戦略立案、マーケティング戦略立案などといったテーマに取り組んでいます。
深山:中途入社だと、元の専門性を活かすことが多いとイメージしていたので、意外です。
岡部:パブリックセクター以外の仕事をして、まずはビジネスを深く知りたいという気持ちが大きかったですね。
折茂:中途入社の場合、金融機関から来られた方が金融プロジェクトで大活躍というパターンももちろんありますけど、岡部さんみたいに、折角なら違うことを学びたいと軸足を変える人もいますね。
深山:深く専門を突き詰めるも、あえて違う軸足に移して掛け算人材になることも、どちらの選択もできる環境というのは魅力的ですね。
社会へどんなインパクトを与えるか?
深山:おふたりがBCGに入社を決めた理由で共通するのが「社会へ大きなインパクトを与えられる」という点ですが、そういった価値観を抱く理由や背景はあるのでしょうか。
折茂:私の場合、そういった思考は以前から持っていたように思いますが、明確に意識するようになったのはMBA留学をしてからです。理由は2つあります。
一つは、MBAへの応募時に、「将来なりたい自分、現在の自分、これを埋めるためにMBAを志望します」というようなエッセイを書く必要があるのですが、それをきっかけに「自分は何者になりたいのだろうか」と突き詰めて考えたことです。
それから、留学中にクラスメイトなど周りの人たちの「こうなりたい」といった話を聞いて刺激を受けたりすることで、自身の思いをさらに強くしていきました。
そして二つ目に、卒業前の最後の講義で名物教授が語った言葉に影響を受けたこともあります。「君たちはキャリア選択において迷うことがあると思うが、迷えるということは非常に幸せなことで、それはいろいろな人たちのお陰であるということを忘れてはならない。これから様々な選択をする際、自分の心の声に従うことはとても大事だが、同時に、その選択が世の中にどんなインパクトを与えるのかということも加味して考えて欲しい。」という内容だったんです。
それで「ああ、自分には支えられてきた責務があるんだ」と改めて痛感し、その時から、自分が何のために時間を使うべきか、と本気で考えるようになりました。
岡部:キャリアを考える要素って、例えば、給料や休みだとか色々ありますね。私の場合、大学の就活の時点で、一番大切なことは「やりがい」だと思いました。
そして、社会で価値を認められることがやりがいに繋がっていて、インパクトの大きさがやりがいに比例すると考えたんです。
また、これまで旅行などで海外を訪れた際に、海外と日本を相対的に見て「日本って良い国だな」と感じたりしていたことが、無意識的に「日本のために働きたい」という気持ちになったというのもあるかもしれないです。
深山:そこに、社会へのインパクトという観点で、最初に仰っていた「自身が及ぼす影響の良し悪しがフィードバックされる環境」という要素が加わって、BCGに移られたということですね。
「社会への価値」を出せる舞台
深山:おふたりの仕事への想いが少し分かって来たところですが、働く環境であるBCGってどういうところでしょうか。特に岡部さんは前職とのギャップなどもあるかもしれませんが。
岡部:まず、スピード感が全く違いました。BCGに入ってからは常に短距離走をしているイメージで、すごく密度が濃くて、1日に何度もPDCAを回すという、そうしたスピード感に最初は圧倒されました。
それと、これも特徴的なことで「岡部さんのスタンスはなんですか?」と聞かれること。
役所では、ステークホルダーの全体調整をして納得のいく解を導くことが大きな仕事でしたが、コンサルティングでは、最終的にそういう解に持って行くところはあるにしても、まず「自分としてどうしたいのか?」を出さないと議論が始まらない世界なので、そこの思考のステップというか、考え方のギャップを最初はすごく感じました。
深山:確かに「スタンスは?」と聞かれても、普段から考えていないと難しいですね。
岡部:最初からみんなが満足する答えを探しに行ってしまうけど、それだと価値が出ないのです。
これとリンクした話で、シニアなコンサルタントが「それ面白いね」ってよく言うんですよ。それは「新たな示唆を与える情報に価値がある」という意味の面白い、でそれを求めていかなければならない組織なんです。
折茂:それと、BCGはグローバルなコンサルファームなので、「こういう価値を出しに行こう」と考えたときにそれを出せるだけの舞台が整っています。国内の優秀なコンサルタント達もそうですし、海外のリソースもガンガン投入して、色々な専門家をヒアリングしたり実際来て話してもらったり、グローバルな知見とか経験の深さ・広さが凄いです。
そこで知的好奇心も満たされますし、新たな人間関係が広がっていくのも楽しいです。
深山:それは非常にやりがいを感じそうですね。
折茂:そうですね。やりがいというところでは、各業界の構造を知れることで知的好奇心も刺激されますし、クライアントから「BCGと働いて良かった」と感謝されるといった人の繋がりなど、やりがいやBCGにいる理由が多重層的に増えていっている感覚ですね。
それと、私の子供たちは2歳と4歳なんですが、いまは「未来の教室」等の教育改革に関わっていて、自分の手で自分の子供たちが受ける教育のあり方を変えることの手伝いをできていることも醍醐味です。
もちろん、AI人材やリカレント教育など、大きな社会課題に取組めるのは非常に大きなやりがいですね。
岡部:私は、お客さんからのフィードバックに飢えていたので、そのフィードバックをもらえた時が嬉しかったです。
例えば、クライアントから「次のプロジェクトをする時は岡部さんにリードをお願いしたい」とか、「このプロジェクトで岡部さんと働けたことが一番の刺激になった」といったお言葉をいただいたりしたときには、感激しました。
社会に大きな影響を与える企業にインパクトを与えられたことは嬉しいことですし、BCGに入って良かったと感じる瞬間です。
柔軟に”それぞれの状況”を受け入れる働き方
深山:一般的に”超多忙”と言われるコンサルの方に聞くのも忍びないのですが、公私のバランスはいかがですか。
折茂:私の場合、子どももいるのでフレックスタイム勤務を活用して働いています。送り迎えは自分がして、迎えに行った後も自分で面倒を見ています。あくまでもクライアント優先で動く仕事なので、そうはいかない日も勿論ありますが、基本的には朝8時半くらいに出社して、夕方6時くらいに退社。そこからは家族との時間で、夜中に仕事をすることもありますが、あまりそれをすると体調を崩すので基本的にはしないように、という感じです。
そうすると、8時半から18時までの間は、ぎっしりスケジュールが詰まっていますが、それはいい意味で効率的に働けているということでもあります。
決して楽だとは思いませんが、それによって子供や夫等家族との時間を大事にしながら充実して働けているな、と感じています。
岡部:そうですね。私も働く場所をそんなに問われないところがとても働きやすいです。
家で仕事をすることやテレビ会議で入ることも多いですし、自分の生活リズムに合わせて場所は関係なく仕事ができるのは、自分に向いている勤務スタイルだと感じますね。
深山:もう一つお伺いしたかったのが、BCGのことを調べると「多様性」という言葉が多く出てきたことです。もちろん、大事なのは分かるのですが、こうして多く打ち出すのには何か理由があるのでしょうか。
折茂:私が入るより前からBCGには「多様性からの連帯」という言葉があります。
これは、お互いの多様性を認め合いながらそれを力に変え、バリューに繋げていきましょうということです。
これは当たり前のことですが、極めて大事なことです。そのため、それがオフィシャルな制度にも、アンオフィシャルな人と人の間のサポートという形でも、BCGでは実現されているという感じです。
深山:その”当たり前を当たり前に実現出来ている”と言えるのが凄いな、と思います。
折茂:働き方の話にしても別にみんなに良い顔したくてやっているのではなく、そうすることで優秀な社員が残り、多様な価値観や立場の人が会社を強めてくれる、会社にとっても良いことだから、実際機能しているのです。
私は1人目の子供の出産後は時短勤務で働いていましたが、産んだ後もどういう風に仕事に戻るかは人それぞれ選択肢が幅広にあります。
他にもフルでクライアントワークに戻りますという人もいれば、子供が大きくなるまではクライアントワークから一旦退いてバックオフィスという人もいて、それはそれぞれの人の価値観であり、家族の形態であり、というところは尊重しているんです。それができる場を会社としては準備します。
岡部:そうですね。様々な意味合いで変化に柔軟、レジリエントな組織だと思います。その大きな理由はプロジェクト単位で仕事が進むことが大きくて、仕事の区切りがしっかりあるというのが大きいのかもしれません。
プロジェクトごとに仕事が進み、プロジェクトが終わるときっちり休みを取れる制度も用意されていて、オンオフの切り替えがしっかり出来ます。勤務時間や在籍期間の長さで評価されるわけでなく、プロジェクトにいるときのパフォーマンスで評価されます。
例えば、産休や育休で途中抜けていても、それは評価に対して何らマイナスになりません。自分が働けるときに働きたい形できっちりパフォーマンスを出せる形で制度なり働き方が用意されていて、個人の変化に柔軟な組織だと思います。
チャレンジの先に面白い世界が広がっていく
深山:おふたりの話を聞いていると非常に魅力的に聞こえますが、一方で、多様で柔軟ということは個人の自律性やパフォーマンスも求められてきますし、合う人合わない人も出てくると思います。
折茂:岡部さんが仰ったように、BCGは変化に対して柔軟な組織です。それを言い換えると、変わり続ける組織ということでもあります。
コアになる「多様性からの連帯」や「クライアントへ価値提供をすること」といった本質的な価値観は変わりませんが、その価値の”出し方”や働き方、追っていくテーマはどんどん変わります。
多分、1年後、5年後に自分が何をしているか分かっていたい人には向かないのだと思います。
私は、極論すると1ヶ月後に何をしているかもわかりませんし、わからない方が楽しいと感じています。そういう特性の方が合っているのではないかと思いますね。
岡部:同感で、変化を嫌がる人や成長を求めない人には合わないように思います。
例えば、自分がやるべきことを淡々とやることに喜びを感じるような職人気質な方には、BCGはあまり向かないかもしれませんね。変化していく自分を楽しめる人が向いています。
深山:岡部さんもBCG入社後、軸足を変えてチャレンジしていますしね。
岡部:すごく大変でしたけど(笑)
深山:そうですね、BCGの魅力を本日は色々お伺いしましたが、そういった魅力ある環境は高いパフォーマンスを出すための並々ならぬ努力が前提にあって実現しているだろうな、ということはおふたりの話を聞きながら伺えました。
一方で、然るべき努力をすることでそれが実る土壌や機会があるのだな、と感じました。
最後にBCGのキャリアに興味がある方もいると思うので、そういった方に一言頂けたら嬉しいです。
岡部:取材でこういうこと言うと嘘くさいかもしれませんが、心からすごく良い会社だと思っています。
正直、厳しい世界なので三年もいられるとは思ってなかったですが、これほど楽しみながら、クライアントの課題の深いところまでご一緒しながら、本質的な正しさを追い求められる環境は中々ないと思っています。
深山:いままで取材していて、そこまでストレートに言える方は出会ったことないので、逆に嘘くさくないような気がします(笑)
折茂:BCGについては、というところは一旦置いておくとして、そもそも人生一回しかありませんし、世の中の変化もとても大きいです。「一回このポジションを捨てると戻れなくなる」といった考え方についても、この数年でどんどん変わってきましたし、これからも変わっていくと思うので、そもそもそのような考え方も無くなっていくと思います。
そうすると、「一度しかない人生だからちょっとでもチャレンジしてみたいと思ったことにはチャレンジしてみてはいかがですか」とお伝えしたいです。
自分にキャップをかけずに、いくつになってもチャレンジしてみたいことが見つかれば一歩踏み出して頂きたい。そうすると面白い世界が広がると思います。
もし、それをBCGに感じた方は、ぜひ門をたたいていただけたら嬉しいですね。
■編集後記
取材の中で非常に印象的だったのが、柔軟な働き方やフラットで多様性を受け入れる環境を「当たり前」のこととして感じていることでした。
「そうあるべきことをそうある状態として当たり前に実行する」のは、言うほど簡単なことではありませんが、それが実現する環境がBCGにはあるのだな、と感じました。
これからもおふたりの官民を問わず、世の中にインパクトをもたらす活躍に期待です。
(取材協力:ボストン コンサルティング グループ、編集・取材:深山、写真:笹谷、深山)
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