いまの仕事にやりがいはある、周りにも頼られている。
しかし、「本当にここに一生居続けることがいいのか」、「したかったことが本当に出来ているのか」と、『なんとなく』の引っ掛かりを感じる人は少なくないと思う。
自分の中の小さな不協和音は、日に日に大きくなってくる。
どう動いていいかも、誰に相談して良いのかも分からない。
でも、より良い在り方に自分をアップデートしていきたい。
そう感じている方に、ぜひ参考にしていただきたい人がいる。
【外務省】→【外資コンサル】→【ベンチャーキャピタル】と、キャリアをピボットしながら活躍をする鈴木祐介さん。
鈴木さんの語る「知覚できる世界の最大化」やその生き方から自分をアップデートし続けるヒントに迫ります。
< 鈴木さんのキャリア >
目次
【原体験】社会と向き合うきっかけ「倒錯感と使命感」
ーまず、なぜ外務省に入られたのかの経緯をお聞きしても良いでしょうか。
まず、高校三年生の時にオマケつきチョコが流行った話から始まるのですが(笑)
ーあの、チョコにおまけのシールが入っている?
そうです。
でも、当時みんなはシールが欲しいから、チョコは捨てたりしていました。
それを横目で見ながら、ちょうど開いていた世界史の資料集に映っていたのが、栄養失調でおなかが水ぶくれして、大きくなってしまったアフリカの子供の写真でした。
それらを見比べて、「なんなんだこの世界っ!?」と、その時の2つの映像の対比が、本当に衝撃だったのが今でも忘れられないんです。
その衝撃と同時に「こんなことが起きる世界の根本的な仕組みや動き方、成立背景が知りたい」と思ったんですよね。
それがきっかけで国際関係論を学ぶために、発祥でもある東京大学に進学を決めました。
ーなるほど、それで東京大学で国際関係論を学んだんですね。
そうです。
それで大学では、論文を沢山読んで、懸賞論文を書いたりしている中で、国際関係論の研究者になりたいと思っていたんです。
ただ、国際政治学には、紛争の原因を分析する枠組みが色々あり、結局「人」の要素が大きいという見方もあるんです。
指導者同士の相性だったり、指導者の性格だったり。
個人間の相性や個人の資質が外交に与える影響は、机上の研究だけではわかりにくく、実務の世界で体感したり目の当たりにしないと、実感を持って理解できないと思ったんです。
で、それを現場で理解したい。じゃあ外務省に行くしかないな、と思ったんです。
それともう一つ。
母国の利益に貢献するという使命感もありました。
ー使命感ですか?
実は、国家公務員試験の前日に母が危篤になり、徹夜で集中治療室に付き添ったけど意識が戻らず、そのまま公務員試験に向かったんです。
その試験中に母は他界しました。
ですが、あとで病院の方から、母が危篤になる前に「私、坂本龍馬が大好きなんです。我が家にも、日本を変えると言っている龍馬がいるんですよ」と看護師さんに嬉しそうに言っていたと聞いたんです。
親の死に目に立ち会わない親不孝者が、絶対に降ろすことの出来ない使命感が生まれました。
その後の仕事でも、「その仕事は面白そうか」の裏には常に「それは日本全体の利益に尽くすという使命に適うことか」という自問自答は繰り返しています。
その” 知的好奇心 “と” 使命感 “が交差したのが外務省だったんです。
【悩み】大河の一滴に過ぎない自分
ー 外務省に入られてからは何に従事されたのでしょうか。
最初はイランとか北朝鮮の核問題、核不拡散体制を扱う部署にいて、その次はアジア諸国とのEPA(経済連携協定)の条文を作る部署にいました。
そのあとフランスに語学研修に行かせていただき、そのまま2008年からはフランス大使館勤務になりました。そこでは、フランスの戦略観を把握し、日本の戦略とどこで合致しうるか分析する仕事をしていましたね。
ーめちゃくちゃ視野が広くなりそうですね(笑)
外交って、全体を見ながらじゃないと出来ない仕事なんですよね。
「全体の中で、自分が行っている交渉はこの部分」、「それによって良くする世界はここなんですよ」という、全体観や相対観という視点を持たずにはできない。
外交に限らず、官僚の仕事はもちろん、あらゆる仕事が大なり小なりこの考えが当てはまるんじゃないですかね。
ーそうすると元々の「世の中の仕組みを知る」ことができる仕事に従事できた、と。
そうですね。
ただ、その仕事がもたらす社会へのインパクトの大きさ、これを因数分解すると”広さ”と”深さ”だと考えているのですが、外務省の仕事って”広さ”はすごいんですよ。
< 活動領域の広さと与えられる影響の深さが、自身の社会インパクトを最大化する >
例えばG20サミットは、グローバルガバナンスそのものを議論する場を設定し、そのコンテンツを作るので、仕事の幅は非常に広いと思うんです。ただ、その中で外務省の一職員として貢献できるインパクトの深さにはすごく限りがあると感じてしまって。
大河の一滴にもならないぐらいのインパクトしか与えられないような気がして、悩んでしまったんですよね。
例えば、退職直前に携わった、とある日本主催の国際会議の仕事で、めちゃくちゃ広い戦略的視野でやっている会議なんですけれど、、、
「会議は成功です!」「良い会議だった!」となっても、、、
「じゃあ世の中具体的にどう変わりますか?」という素朴な自分への問いの答えが、わからなくなっちゃったんです。
ぼくは、経済畑の外交官を目指していたのですが、その頃には自分の扱う仕事の影響の”広さ”だけでなく、”深さ”が伴うように、できるだけビジネスのわかる人間になりたいと思うようになりました。
それは、外務省に入ったのと同じ発想で、国際関係論を勉強しているだけでは外交の本質が分からなそうだというのと一緒で、ビジネスも学ぶだけじゃなくて、やらなきゃ分かんないかもしれないと。
じゃあやろう、ビジネス。もう社会人10年目だし、今かなって。
あとは直感と、とりあえず動くって感じでした。
とりあえず、コンサルの面接を受けて、すごく楽しくて、幸いにも内定をいただいて。
受かった後に、さあどうしようかと悩んで、妻に相談しました(笑)
ーその「とりあえず動く」というのは非常に重要な気がしますね。
「どうしよう、どうしよう?」と動けなくなってしまう人の気持ちは非常によくわかります。
キャリアについては、大きな決断が必要なものなので。
でも、自分の興味が少しでもあることなら、とりあえず話を聞きに行ったらいいんです。
聞きたいことをちゃんと引き出そうと思ったら準備をするし、準備をしたら自分の思いや悩みが本当はどこにあるのか整理されるし、話したら思わぬ情報をもらって更に整理されるじゃないですか。
もやもや悩むなら動くといい、って思うんですよね。
そうすると「知覚できる世界」が拡がって、自分の思い描く「次」の解像度が上がっていく。
【衝動】「知覚できる世界の最大化」が自分の可能性を最大化する
ー知覚できる世界ですか?
人間、自分の『視野、見られる世界』でしか物事を考えることはできないじゃないですか。
見えない世界はそもそも感知しえないので。
世界を良くするといったところで、視野の狭い人間のままだと、すごく狭い世界の一部分を変えようとしているのかもしれない。それは世の中全体の構造から見ると、むしろアンバランスなことをやっているかもしれないですよね。
だから、自分が感知しうる世界を広げていきたいというのが自分の根幹にもあります。
そして、それを構成するポイントが3つあります。
ー感知しうる世界を拡げる3つのポイントですか?
はい、まず『 パースペクティブ 』。視野の広範性ですね。
2つ目が柔軟性。
3つ目が感性。
この3つを極限まで高めるのが大事だと思っています。
自分の持っているアンテナの”広さ”そのものが『視野の広範性』。
そのアンテナを広げる力が『柔軟性』。
広げたアンテナの中で捕捉できる物事の”深さ”を決めるのが『感性』。
その3つの力で、自分が知覚できる世界の面積が広がっていきます。
<知覚出来る世界を3つの要素で考える>
ー知覚を最大化することで何が起きるのでしょうか?
自分が知覚できる世界の範囲によって、自分ができることの範囲が規定されてしまいます。逆に知覚を最大化することによって、自分の出来ることの可能性は拡がっていくと考えています。
なので、知覚できる世界を最大化するように動き続けたいっていうのが、自分の根幹の衝動としてあります。
例えば職場という意味だと、今いるところが最適な環境じゃないんだったら、最適な環境になるように努力すればいいし、どうしても無理なら別の環境に移ればいいかもしれない。
立ち止まったら終わりだな、と思っています。
立ち止まったら、自分の見ている世界とそこでできることは、限界値を迎えてしまいます。
ーその衝動に従って、コンサルに転職されたということなんですね。
後編では、鈴木さんが外資コンサルに入った後に感じた外務省とのギャップとそこから来る学び、そして現職でいままでのキャリアがどう繋がっていくのか。
いま悩んでいる人に向けたメッセージもありますので、お見逃しなく!!
(取材協力:グローバル・ブレイン株式会社、編集・取材:深山 周作、撮影:栫井 誠一郎)
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